習い事ナビ 2015.08.13
【コーチインタビュー#3】自由度が高くて選択肢が多い。だからサッカーでたくさんのことを学べる。(伊藤正基コーチ)
投稿者: 齋藤純子
会社員をしながら、週末やアフターファイブに子どもたちにサッカーを教えている伊藤正基(いとうまさもと)さん。サッカーのスポーツとしての魅力、サッカーを通じて学べることについて伺いました。
サッカーは「考える力」が問われるスポーツ
サッカーは、球技の中で特に自由度の高いスポーツと言われています。テニスのように敵味方でコートが分かれていないのでどこでも走ることができますし、バレーボールのように3回で相手に返すというルールが無いので、何度でもボールに触れることができます。
自由度の高さは、プレーの選択肢の多さに繋がります。パスをするのか、ドリブルか、それともシュートがいいのか。ボールに触れていないときでも、コートのどこにいてどう動くかなど、様々な選択ができる。大まかなことは戦術や監督の指示があったとしても、その場で選択するのは個人、いまどんなプレーが大切か見極め考える力が必要とされるんですね。そこがサッカーの難しさでもあり、面白いところでもあると思います。
伝え過ぎず、自ら考えることを促すように
小学生を対象としたクラブチームで今年3月まで13年間コーチをしていました。特に注意していたのが「伝え過ぎないこと」です。
例えばボールをとられたとき、なぜとられてしまったのか、まず当事者の選手に聞く。ディフェンスが良くなかった、と答えが返ってきたら、なぜ良くないと思ったのか原因を尋ね、考えてもらいます。とられた理由をこちらから先に説明してしまうと、その原因について考えるタイミングを奪ってしまう。子どもたちに考える習慣をつけてもらうために、伝えすぎないことを意識しました。
考えることが習慣になると、自分の中での選択肢が増え、また、それを選ぶ力も鍛えられます。プレーでの能力の向上はもちろんのこと、効率の良いトレーニングや練習にも繋がります。
考えることは、チームプレーや礼儀にもつながる
サッカーはチーム競技なので、チームメイトや相手と関わるためのコミュニケーション能力も必要です。この能力も、考えることを通じ、自然と伸ばすことができる力だと思います。
例えば、10対0の得点差の試合でも、全力でプレーするということ。相手選手、審判員、大会運営の方々、応援に来ている家族や友だちのことを考えたら、手を抜いたり投げ出したりすることはできないですよね。挨拶などの礼儀の大切さも、相手やチームメイトと気持ち良くプレーするためにはどうすればいいか、考えることで自然とわかることだと思います。
選手の持つ能力を引き出すために
年中以上の未就学時からレッスンは受付けています。できれば運動能力全体の向上のためにも、小学校低学年時にはスタートしたいですね。小学校低学年からU-12 までの「プレ・ゴールデンエイジ」「ゴールデンエイジ」と呼ばれる時期は、運動能力を高めることに最も適していると言われています。日本サッカー協会も、その時期のトレーニングが大切と位置づけています。
個人でレッスンするときは、マンツーマンもしくは学年が近い子ども3人くらいまでの少人数のスタイルです。ボールを蹴ることができる公園などで教えることが多いですね。
ちょっとしたコツをつかむことで、子どもの能力は飛躍的にアップします。足が遅くても、身体の使い方を知れば速くなりますし、ドリブルやパスも同じです。能力を引き出すためのコツを伝えつつ、自分で考えるためのサポートをする。それがコーチの役目だと思います。
チームプレーを通じて、社会性が身につく
サッカーにはポジションがあり、ポジションによって求められる能力も少しずつ異なります。選手に希望するポジションがあれば練習でやらせることもありますが、試合では選手たちの特性を見てコーチ側が決めることがほとんどだと思います。
好きなポジションでなかったとしても、試合に出たら活躍できたので、それをきっかけにそのポジションが好きになることもあります。また、好きではないから投げやりになってしまう、好きではないけれどチームのためにはそうした方がいいと納得する、好きなポジションで試合に出られるように練習で努力するなど、子どもにとって捉え方・乗り越え方は様々です。
学校などの社会の場でも同じようなことはよくあることだと思います。自分の望む係や席にならなかった場合、それをどう捉え乗り越えるか。サッカーとの関わりの中で、社会性についても学びます。
どのプレーを選択するか決めるのは選手個人と最初にお話ししましたが、どれが正解なのかは誰もわかりません。ゴールに繋がればそれが結果的に正解になる。試合の中で一度として同じシーンが訪れないように、正解はそのときだけのもの。チャンスに備えて考えて行動するという心構えも、サッカーを通じて知ってもらえるとうれしいですね。
<取材・文/齋藤純子>
■お話しを聞いて……
子どもたちのことを話すとき、子どもではなく「選手」という言葉を使ってらっしゃったことが印象的でした。子どもと大人ではなく一人の選手とコーチとして接っするというプロ意識が伺えました。
