習い事ナビ 2015.07.8
【コーチインタビュー#1】子どもの感性を伸ばし、「肯定力」を育む生け花(奥平祥子先生)
投稿者: 齋藤純子
石草流生け花の奥平祥子(おくだいらしょうこ)さん。自然に生えるそのままのあり方を大切にした生け花を教えています。生け花を通じて、子どもたちの「肯定する力」を伸ばしてあげたいとのこと。その思いを伺いました。
自然のものをありのまま活ける
私が師範をしている生け花石草流は、教本や骨法などで模範としている型が少ない流派です。最も良いとされる基本の型は伝えますが、花そのもののあり方と、活ける本人がいいと思える角度(確度)を創作の基本と考えています。
自分の思いのまま活けたものであれば、なぜこの花を選び、なぜこのように活けたのか。一人ひとりの中に必ず答えはあります。その感性と表し方を、生け花を通じて伸ばしていただければ、と思います。
アレンジメントは足し算、生け花は引き算
西洋のアレンジメントと日本の生け花。同じ花を通じた表現方法であるものの、創作のベクトルは正反対です。
アレンジメントは、ゴールとして思い描いた丸やスクエアの型に花を挿して完成させていく足し算の発想。生け花は、素材(花)そのものの良さを引き立たせるために、余計なものを取り除く。引き算で作り上げます。
花を自分のイメージ通りにコントロールするのではなく、花の特徴をとらえその花がより美しく見えるよう手助けをする。それが生け花の根本の考え方です。
素材の特徴を見定める力とその見せ方を、生け花で培ってもらえればと思います。
花を選ぶことを通じて、感性を育てる
自由に花を活けることは、子どもたちにとって、とても自然なことです。
大人になるとつい、持ち帰りしやすい丈か、自宅に合う色味か、などと周辺のことを考えてしまいがちですが、子どもたちは今の自分の気持ちのまま、思いのままに花を選びます。
男の子が可憐なピンク色の花を選ぶこともあるでしょう。それを男の子だからこっちにしなさいと促すことはしたくありません。彼が思ったとおりに活けて欲しい。周りの大人は私も含め、見守る役目に徹っするべきと考えます。
「人生を教える」ことができる先生を求めた両親
私自身は子どもの頃、ピアノ、バレエ、リトミックなどを習っていました。両親は「習い事は技術だけでなく人生を教わる」と考え、両親と先生が面談した結果をもとに教室を決めていました。教室選びに時間はかかりましたが、そのおかげで私にとっても尊敬できる先生方に巡り合うことができました。
特にリトミックの先生からは多くのことを学びました。できなかったことを憂うのではなく、できたことを伸ばすことを大切にし「10あるうち1や2しかできなくても、その1や2がその子の宝物だから、それを伸ばしてあげよう」という考えで子どもに接してくれました。「この色は?」と先生にナス柄を散りばめた服を指して聞かれ、皆が青と答える中、私一人だけ緑と答え周りの子どもに間違いだと笑われたことがありました。それを見て先生は「それは間違いじゃない、よく見るとナスのヘタに緑を使っているよ」と認めてくれたんです。それがとてもうれしかったことを憶えています。
肯定することの素晴らしさを伝えたい
私が子どもたちに学んで欲しいことは「肯定力を身につける力」です。
子どもたちの感性を肯定する場でありたい。また、子どもたちにも、他の子どもたちが感性で作り上げたものを認めてあげられる、そんな力をつけてあげたいと考えています。
日本人が本来持っている和の力は、異なる感性を認め、統合する力であると思います。料理などがそうであるように、異なる思想・文化の相手を受け入れる、丸飲みできる力があると考えます。
日本古来の芸事である生け花にも、その考え方が根付いています。花を活けることを通じて相手を肯定すること、相手を肯定してあげられる力を学んで欲しいと思います。
<取材・文/齋藤純子>
■お話しを聞いて……
ホテルオークラ東京のアレンジメントを担当している奥平さん。自然の佇まいを大切にした作品の数々は、日本の美そのものを表しているようであり、多くの来賓をお迎えする場に相応しいと感じました。
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