習い事ナビ 2017.06.22
【インタビュー】知らないうちに親が子の時間を管理して奪っている!?子どもにとっては大事な時間の使い方とは?
投稿者: ノビルコ編集部
「ぼーっとしてるくらいなら、○○しなさい!」
そんな風にわが子を叱りつけたことのある親、もしくは子ども時代に親にそう叱られた経験を持つ大人は多いのでは?
だが育児・教育ジャーナリストのおおたとしまささんは、「子どもにとっては、ぼーっとする時間こそが一番大事」と力強く言い切る。
詰め込み型スケジュールが子どもに与える弊害とは? 「ぼーっとする時間」を持つことは、子どもにどんないい影響をもたらすのか? 最新の著書『習い事狂騒曲 正解のない時代の「習活(しゅうかつ)」の心得』(ポプラ新書)が話題のおおたさんに、前編に引き続きお話を聞いた。
放課後の過密スケジュールはなぜ危ういのか?
――『習い事狂騒曲』の中では、子どもの放課後の予定を学習塾や習い事でぎっしり詰め込んでしまう親は、無意識のうちに子どもから「時間の感覚」を奪っている、という鋭い指摘がありました。教育熱心な親ほどドキッとさせられるかもしれません。
まさにそこが本書の一番のメッセージなんです。スポーツだったり、英会話だったり、いろいろな習い事をさせれば、それだけ子どもの可能性は広がりますね。けれども、毎週習い事をさせるということには、その分、子どもが「誰と、どこで、何をして過ごそうか」と自発的に考える機会、デザインする力を奪っているという側面もあるのです。
もちろん、子どもが「やりたい」と意思表示していることなら積極的にやらせてあげるべきでしょう。そうではなくて、親の勝手な思い込みで子どもの放課後を強制的にびっちりと埋めてしまうのは、その子の成長する時間を奪ってしまう側面もあるということは気をつけてほしいですね。
――親としては「ぼーっと無駄な時間を過ごすくらいなら、何でもいいから何かさせたほうがいいんじゃないかな」とつい思ってしまいがちですが…。
子どもには、ぼーっとする時間も絶対に必要なんですよ。むしろそんな時間にこそ、子どもたちは成長している。今日の放課後をどういう風に使おうか? となったときに、「晴れてるから友達と公園でサッカーしよう」「ザリガニ釣りに行こう」「家で漫画読んでようかな」「ゲームしよう」といろんな選択肢がありますよね?
何をしているときなら自分は心地いいのかを感じる時間はすごく重要。それを何度も繰り返すことが、自分の人生をどう生きるかを考えることにもつながります。親が子どもの意見を無視して放課後の予定を全部埋めてしまうということは、その訓練をさせないこととイコールです。少なくとも小学校低学年までは、「テレビを見る時間を制限する」と同じような感覚で、習い事の数にも制限を設けるほうがいいと思います。
「習い事の数」と「人生で得るもの」は比例しない
――親が子に「一方的にやらせる」のではなく、親子で相談しながら進めていくことも大切なのですね。では最後に、習い事選びの秘訣を教えてください。
まずは子どもが「やりたい」と言うものを優先させてください。後先考えず「あれもこれもやりたい!」と言う子の場合は、親子で相談して優先順位を付け、数を絞りこみましょう。何か新しいものを始めるのなら、別の何かを手放さなければならない。そういう訓練を積み重ねていくことも大事な経験だと思います。
親としてもできる範囲でいいんです。無理に3つも4つも掛け持ちさせる必要なんてない。きょうだいが増えたら時間にもお金にも制約が出てくるし、そのときは2つから1つに減らせばいい。それは負い目でも何でもなくて、きょうだいがいることで日常生活の中で得られるものもたくさんある、と考えてください。
習い事を1つやっている人生と、5つやっている人生で、何か得られるものが違うのかっていったら、僕はそんなに変わらないと思います。これからの時代に必要とされるであろう「非認知能力」や「やり抜く力」などは、おそらくどんなことでも一生懸命やることで磨かれるはず。大事なのは「何をやるか」よりも、「どのようにやっていくのか」なのです。
<取材・文/阿部花恵>

おおたとしまさ
ポプラ新書 800円(税別)
そもそも親は何のために子どもに習い事をさせようとするのか? 習い事熱が高まってきた時代背景、親世代とは違う常識、習い事選びの提案など、最新の「習活」事情を踏まえつつ、情報過多の時代の習い事の心得を説く。「わが子にどんな習い事をさせるのが正解なのか?」と悩んでいる親は必読。
