インタビュー 2019.06.20
【インタビュー】〜藤井聡太からオバマ前大統領まで〜「モンテッソーリ教育」がなぜ注目を浴びるのか?(前編)
投稿者: ノビルコ編集部
将棋の最年少プロとして注目を浴びる藤井聡太七段、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ、オバマ前米大統領、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ、Amazon創業者ジェフ・ベゾス……。各界の最前線で活躍する彼らの共通点、それは幼少期に「モンテッソーリ教育」を受けていたことだ。
モンテッソーリ教育は他の教育方法と何が異なるのか? モンテッソーリ教育の素晴らしさを実感してモンテッソーリ協会教員免許の資格を取得。26年間の幼稚園・保育園勤務経験を活かして、乳幼児親子教室「輝きベビーアカデミー」を立ち上げた代表理事の伊藤美佳さんに話を聞いた。
モンテッソーリは普通の幼稚園とどこが違う?
――伊藤さんがモンテッソーリ教育を知ったきっかけは?
私には3人の子どもがいるのですが、一番上の息子は普通の幼稚園に入ったんですね。2番めの長女が幼稚園に入る前に、たまたま友人に誘われていろんな園を見学したのですが、その中のひとつにモンテッソーリ教育の幼稚園があったんです。
その幼稚園を見学したとき、それまで私が知っていた幼稚園や保育園とはまるっきり何もかもが違っていたことに驚いてしまって。
たとえば、まずぱっと見たときに部屋のどこに先生がいるのかわからないんですよ。子どもたちはみんな、あちこちで違うことをやっている。アルコールランプを使って塩水から塩を作る実験をしている子もいれば、本物のアイロンを使ってアイロンがけをしている子もいるし、外で好きなように走り回って体を動かしている子もいる。先生は近くでちょこんと座って見守っているだけ。
――集団で同じことをするのではなく、それぞれが好きなことをして過ごしている?
はい。自由な個別活動を大切にする、子どもの自発性を重んじる。あとで知ったことですが、モンテッソーリ教育にはそういった方針があるんですね。
見学時に、まさにそれを象徴するような出来事があったんです。遊んでいる最中、一人の子どもが水をこぼしちゃったんですね。普通の園だったら先生がまず手を出してさっさと拭きますよね? 子どもたちも「先生ー! ○○ちゃんがこぼしたー!」と騒いだりする。
でもモンテッソーリの園の先生は、「じゃあ○○ちゃん、一緒に雑巾を取りに行こうか」と声をかけて、その子と雑巾を取りに行くところから教え始めたんです。雑巾を持ってきて、床を拭いて、水洗いして、絞って、干す。そこまでの一連の流れを先生が教えながらその子に実践させて、「雑巾を片付ける場所はここ、拭き方はこうだよ。今日覚えたから、次からは自分でできるようになろうね」と優しく導いていた。周囲の子たちもとくに騒がず、穏やかにその光景を受け止めていました。こんな教育法があるんだな、と驚きでしたね。
長女と末っ子をその園に入学させた後も、「もっと深くモンテッソーリ教育を学びたい」という気持ちが自分の中で強くなってきたため、勉強を続けてモンテッソーリ協会教員免許を取得しました。
「見守る」がモンテッソーリ教育の特徴
――伊藤さんは幼稚園教諭と保育士の資格をお持ちですが、モンテッソーリ協会教員免許の試験内容はまた違いましたか?
180度と言っていいくらいに違いました。幼稚園教諭や保育士は心理学や児童心理学を踏まえつつ先生が子どもたちに指導して何かをやらせる、というスタイルが基本なのですが、モンテッソーリはあくまでも子どもが主体。
子ども自身が、まず自分でやりたいことを選択する。選択した後は、集中してやり遂げる。モンテッソーリ教員のおもな役割は、それをしっかり見守ること。いわば、子どもが自分の中にある才能を引き出すためのサポート役なんです。
――好きなこと、興味があることだからこそ集中してやり遂げられる。どんな習いごとにも共通することかもしれません。
そうですね。「やり遂げた」という成功体験は、次のステップに向かう自信、そして人生を生きていく上での土台にもなりますから。
家庭での教育も同じで、大人が「あれやりなさい」「次はこれやりなさい」と指示してばかりでは、いつまで経っても子どもの自主性は伸びません。自発性を大切にして、集中できる環境を整えること。それが子どもの才能を引き出すことにつながると思います。
――後編では子どもの才能を伸ばすために、親がすべきことについて詳しくお聞きします!
<取材・文/阿部花恵 撮影/川口宗道>

伊藤美佳
かんき出版
1400円(税別)
