習い事ナビ 2016.12.8
【インタビュー】「親に必要なのはプロデューサー視点」 15歳の五輪メダリスト・伊藤美誠を育てた母の愛と戦略
投稿者: ノビルコ編集部
2016年のリオデジャネイ五輪では卓球五輪史上最年少で銅メダルを獲得。ロンドン五輪の銀メダルに続き、2大会連続のメダルを手にして日本中を沸かせた卓球女子団体。福原愛(27)、石川佳純(23)と共にチームを組んで戦い抜いたのは、わずか15歳の伊藤美誠選手だった。
“2020年の東京オリンピックでは絶対に個人・団体ともに金メダルをとります”
15歳で堂々とそう公言できる天才少女はどうやって作られたのか?わが子の才能を見抜き、育てるために親が身につけるべき“プロデューサー視点”とは?コーチ兼親として、美誠さんを育て上げた母・伊藤美乃りさんに話を聞いた。
「この子、才能があるかも」そう感じた衝撃の第一球
――15歳で五輪メダリストとなった美誠さんのように……とまではいかなくとも、「わが子の才能を伸ばしてあげたい」「夢中になれるものを見つけてほしい」というのは多くの親に共通する気持ちです。美乃りさんが母として、娘の才能に気づいたのいつでしたか?
私も夫も卓球選手でしたから、美誠が赤ちゃんのときから卓球台に乗せて遊ばせたりはしていたんです。それは早期教育とかそういうことではなく、たんに自分たちが卓球の練習をしたかったから。そんな環境でしたから、自然と卓球に興味を持つようになったんでしょうね。2歳の終わり頃に、美誠から「自分もやりたい」と言い出したんです。
そのときの私は自分が練習することばかり考えていたので、「練習時間が削られるのがいやだから、もう少し先延ばしにできないかなあ」なんて正直思ったんです(笑)。それでも、子供がやりたいと言い出したことはすぐにやらせるがモットーだったので、その日のうちにラケットを買いに行きました。そして、次の日に公民館を借りて、美誠にラケットを持たせてちょっとやってみたんですよ。
そうしたらその第一球目が面白かった。飛んできたボールに対して普通の選手のように体を引いて、リズムをとり、ラケットに当てて、スパンと鋭く返してきたんです。卓球台から頭が見えるか見えないかくらいの身長しかないのに。「なんなんだこの子は?」とすごく面白くなってしまったし、親としてではなく第三者的な、いわばプロデューサー的な視点から「才能があるかもしれない」と感じました。その瞬間から「プレイヤーとしての自分はもういい、これからは美誠のコーチとして彼女を育てることに全力を注ごう」と即座に決めました。
練習中は鬼コーチ、終わったら愛情いっぱいのママ
――神奈川から静岡へ引っ越し、新築の自宅のリビングに卓球台を設置。そこから1日最低7時間という過酷な練習の日々を続けたと、『子供が夢を確実に叶える方法 そのために親がすべき29のこと』には書かれています。母親とコーチの役割を兼任するにあたって意識していたことは?
美誠に卓球を教えているときは、親としての感情は極力出さないようにしていました。「今、しんどいだろうな」「逃げたいだろうな」っていう気持ちは見ていれば当然、手に取るようにわかるんですよ。それでも、その感情を100%受け止めすぎない。マシーンのような澄んだ目線で娘を見ていました。美誠が泣いても喚いても動じずに、「気が済んだ? じゃあ続きやりましょう」というスタンスを貫く。わが子の才能を伸ばすためには、子供に媚びないことも大事だと私は思っています。
けれども、訓練が終わった後はすぐに母と娘に戻ります。私も美誠も納得できるところまでやりきったら、美誠は両手を広げて「ママー!」と飛び込んでくるし、私も母の顔に戻って美誠をぎゅっと抱きしめる。その後は「今日は夕ご飯何食べる?」なんて話をしながら体をマッサージしてあげて……。そんな風に、言葉でも態度でも愛情をしっかり示してあげることは常に心がけていましたね。
――コーチとして厳しく接しつつ、母親として愛情を注ぐ。卓球以外にも、子育てにおいて大事にしていたことは?
初めて触れるものは「本物」を与えること。卓球台もそうですが、歌やダンスなら一流アーティストのライブを、演劇なら劇団四季や宝塚を、というように、初めてはすべて「本物」を一番いい席をとって見せてきました。「子供にわかるわけないでしょ」と親が思っていたら、伸ばせる才能も伸ばせません。吸収力が高い子供のうちにこそ、お金をかき集めてでも「本物」に触れさせよう。それは美誠が幼い頃からずっと意識してきたことです。
(後編へ続く)
後編は、「子どもの“夢”を実現させる、どんな親でもできる極意」についてお伺いしました。どうぞお楽しみに!
<取材・文/阿部花恵>
<写真撮影/鈴木慶子>
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